不老不死に関しては、誰もが一度は興味を持ったことがあると思う。
老いや死は平等に訪れるものであり、それは他の動物たちも同様…
と思われていた。
が、それらの常識を覆す、とある生き物が近年注目を集めている。
今回は、不老不死のカギを握るネズミ、
『ハダカデバネズミ』を紹介していこうと思う。
Googleによる1500億円の資金援助
世界最大の検索エンジンを運営する、時価総額世界第4位のGoogle。
そんなGoogleによる資金援助で、2013年に『Calico LLC』という企業が設立された。
Calicoはアメリカの生物工学の研究開発企業で、
老化とそれに伴う病気を縮小、予防することが目的である。
中でも特に資金を投じているのがハダカデバネズミの研究であり、
これまで3000匹以上のハダカデバネズミの誕生から死因までを詳細に記録している。
異質な哺乳類「ハダカデバネズミ」
ハダカデバネズミについて以下にまとめてみた。
生息地:エチオピア、ケニア、ジブチ、ソマリア
体長:10~13cm程度
体重:9~69グラム
寿命:30年
・体毛が無いことや環境の変動が少ない地中で生活するためか、
体温を調節する機能がなく体温も低い。
・哺乳類でありながら体温調節ができない変温動物である。
それによってエネルギー消費量を低く抑えている。
・気温が低くなると集団が幾重にも重なった上に子供たちを置いて保温する。
・完全地中棲。10頭以上290頭以下(平均75 – 80頭)の、大規模なコロニーを形成活する。
・60 – 70頭のコロニーで長さ約3キロメートルに達する巣穴も確認されている。
・哺乳類では数少ない真社会性の社会構造(高度に分化した階級)を持つ。
・自分と極めて血縁な個体の世話をする。
・無酸素でも18分間生存可能。
・餌が少ないと代謝を減らして生き延びる。
・がんに対して極めて高い耐性を持っている。
クラゲや植物の中には、老化現象ほどんど見られない種が存在しているが、
哺乳類で老化現象がほとんど見られないはハダカデバネズミのみ。
東京大学や熊本大学の研究グループによると、
ハダカデバネズミは「ネクロプトーシス」という強い炎症を引き起こす遺伝子が機能を失っている。
これががんにならない原因のひとつになっている。
これをうまく利用できれば、人間のがんの克服が可能になるかもしれない。
iPS細胞 × ハダカデバネズミ
iPS細胞とは、皮膚などの体の一部を採取して培養することで、
体のどの部位にでもなれるという細胞のことだが、弱点がある。
目的の臓器になりきれていない未完成な細胞が残ったまま移植してしまうと、
その細胞が腫瘍になってしまうリスクが問題視されていた。
そこで、北海道大学の研究所が、ハダカデバネズミのiPS細胞を用いた場合に、
細胞が腫瘍になってしまうのかを検証しました。
すると、ハダカデバネズミのiPS細胞は、未完成な細胞を含んだまま移植しても、
腫瘍を形成なかった。
また、ハダカデバネズミのiPS細胞のARFというがん抑制遺伝子は活性化状態にある上、
「細胞老化」という、がん細胞の増殖をとめる機能も備わっている。
つまり、ハダカデバネズミはがんに対して二重の防御構造を宿しているのである。
これらのメカニズムや特徴により、いつしか、
不老不死のカギを握る存在として知られるようになったのだ。
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