意識と無意識の境界はどこにあるのか。運転中に咄嗟の急ブレーキが間に合うのは何故か。
誰がブレーキを踏んだのか。誰がブレーキを踏むように指示したのか。
それはあなたであって、あなたではない。
全てを司る1300グラムの物質
我々が知る限り、万物の中でもっとも複雑なのは脳である。
脳はニューロンとグリアと呼ばれる細胞が数千億個集まってできている。
それらは電気パルスを発していて、毎秒数百回のやりとりがなされている。
当然、これらは驚異的に複雑なつくりになっている。
わたしは、わたしへのアクセス権を持っていない
今文章を眺めているあなたは、あなたの脳内で生じているもののほんの一部にすぎない。
脳は独自に仕切りをつくっているため、そのほとんどに意識はアクセスできない。
無意識が管理する領域に、意識は入り込む権利を持っていない。
魅力的な女性を選んだのは誰?
被験者の男性たちの前に、数枚の女性の写真が並んでいる。
写真の女性は、目を”かすかに”見開いている人と、そうでない人がいる。
判別が不可能なほどのちいさなな差異であったが、
男性たちは一貫して、目を見開いている女性を魅力的に感じた。
「こちらの女性の方が、2mmだけ目が見開いていたので、魅力を感じました。」
そんなふうに選んだ理由を答える人は当然いない。
全ての男性が、魅力を感じた理由を明確に説明できなかった。
では、選んでいたのは誰なのか。
被験者の男性、すなわち意識は脳内のほとんどにアクセスできない。
しかし少なくとも、そのアクセス不可能な領域の”何か”は、目の見開いた女性が興奮、期待に
関連があることを知っていたようだ。
脳は知っていたが、被験者の男性は知らなかった。
美しさの定義や、魅力を感じる感性が、脳の奥深くに備わっていて、
それらによって魅力的な女性を選ぶ舵取りがなされていた。
私たちが知りたいこと、知るべきこと
私たちが知りたいのは、結局のところは結論である。
増税がなされても、どういった経緯でそれが決まったのかにはさして興味がない。
知りたいのは、税率が何%増えるかであって、どれくらい家計に影響を及ぼすのかである。
意識とはまさに、税率を知ること、すなわち結論を知ることをやっている。
あなたが結論を知る頃には、すでに無意識はその経緯を整理して理解までしている。
もしもあなたが革新的なアイデアを思いついても、それはあなたの成果ではない。
あなたが思いつくずっと前に、あなたの神経回路はそのアイデアを思いついている。
あなたに届くのは結論だけなのに、あたかもあなたは自分の手柄であるかのように振る舞っている。
3000を超える定理や公式を生み出したインドの魔術師”ラマヌジャン”は、
寝ている間に女神からのお告げがあったというのは有名な話である。
もしかするとその女神とは、ラマヌジャンがアクセスできなかった領域で、
ひっそりと数式を量産していたのかもしれない。
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